ジュラシック・ワールド

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★★★★☆ 4.1

本作はシリーズ初の明確な「悪役」恐竜が登場する。このポイントを押さえてメイン悪役恐竜「インドミナス・レックス」の立ち回りを注目して観ると格段に面白さが上昇する。これまでのシリーズ作品と同じく、遺伝子操作による誕生からビジネス運用の流れの中で生まれた恐竜達が人間の欲望や支配を上回る生態で翻弄するという設定は変わらないままだが、ティラノサウルスなど比べ物にならない強さと賢さと残虐さを兼ね備えた悪役恐竜を主人公達が"悪い人間達による生命を弄ぶ身勝手な研究や計画に対して怒りを抱きながら討伐する"という今までになかった話の流れが面白さを上げている(これまでは「脅威」である恐竜からいかに逃げ切り島を脱出するかがミソだった)。ホラー性よりエンターテインメント性を重視したモンスターパニック映画であるが、そこはやはり「ジュラシック・パーク」クオリティ… 話も恐竜のVFX再現も非常に面白かった。

さよならの朝に約束の花をかざろう

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☆☆☆☆ 1.8

美しい世界観とキャラクターが織りなす "本来なら" 幻想的な物語に出来る要素が揃っている雰囲気に「陰気」の靄(もや)を全体にかけ、残酷な展開や設定を随所にこれでもかと言わんばかりに挿入する監督・脚本の仕法に対して終始不快感を示さずにいられなかった。寿命に大きな差がある異種族間で描く事で視える「いつまでも変わらない子に対する母の愛」を伝えたかったのかもしれないが、ならばこそ"不必要な残酷な描写"が多いように感じた。本当に勿体ないと思ったし、もっと美しい作品に仕上げてもらいたかった。(※これから観ようと考えている人は、僕の意見は参考にしないでほしい。何故なら筆者はこの作品を通じて制作側が伝えたいとするメッセージを受け取る事が出来なかった、つまり「自分に向いていない映画」だったからだ。あなたが観るときっと感想は違うはずである。)

10 クローバーフィールド・レーン

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★★★★☆ 4.2

物語は人里離れた道を自動車で走行中の主人公が突然の衝突事故に遭い、謎の密室で目を覚まして明らかに異様な雰囲気を放つ家主と対面する所から始まる。地球外生命体が市街地を攻撃中である事を知らぬまま。地球外生命体とは言わずもがな空想上の存在だと普通は考えるが、日光すら拝む事の出来ない密室で家主から「外は攻撃を受けていて出る事は出来ない」「帰宅途中に偶然発見した君を助ける為にやった」と説明を受け困惑する主人公の何を信じたら良いか分からない状況下でいかにして現実へ戻るかという行動が目を引く内容となっている。とにかく先の読めない進行となっており、主人公の機転を利かせた行動と次々と迫る目を背けたくなるホラー展開が心を凍り付かせてきながらも観る者の心を掴んで離さない大変面白い作品でした。

LOGAN/ローガン

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★★★★☆ 4.4

「死ねない」というのはローガンという男の体質に限らず、名声や影響力があるゆえに「終わり」を迎える事を許されず延命され続けるヒーローとしてのブランドにもあったといえる。そんな「死ねないヒーロー」の最期を切なくも安堵できる形で描きピリオドを打ったこの作品は至上の一作だといえる。果て無き長い人生の中で行く先々殺しに付きまとわれ永遠に安寧の場所を見つける事ができない、耐え難い日々を送ってきた呪われた男の物語を追った以上観なければならない「終わり」を看取る形で拝む事が出来て本当に光栄です。ローガン、ヒュー・ジャックマン、本当にお疲れ様でした。

エイリアン:コヴェナント

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★★★☆☆ 3.2

本作はエイリアン誕生の謎を解き明かす作品という事で内容が分かりやすく作られており、主役もエイリアンとその創造主と言ってもいい。それ以外の登場する人間達は宣伝ポスターにもいる、劇中最も活躍する女性を含めそれらに翻弄されながら作品の陰鬱な雰囲気を醸す役を買っており、間抜けに殺されたりしながら物語を地獄へと一直線に降下させていく。鑑賞中に先の展開を想像出来てしまう不安感を、新設定や最新VFXでヌルヌル動く「生まれ変わったエイリアンのアクション」でカバーしている映画でした。面白かったけど驚く要素は無い。

きみの声をとどけたい

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★★★★★ 5.0

良いと思った部分を挙げだしたらキリがない、非の打ち所のない素晴らしい青春群像作品。ひたむきに奔走する7人の高校生の個性を一人も損なわせることなく見せ、かつ本作のテーマである「言葉の持つ力、その大切さ」をしっかり表現している。軽快なテンポで話を進行させながら一つ一つに見せ所を盛り込んである描写は1分1秒足りとも退屈に思わなかった。劇中舞台の美しい海と空、街並みとそこに住む人の良さなどの描写、それらを映すアングル演出は思わず見惚れる出来ばえ。今はもう大人になった僕に自分自身の行動を見つめ直そうと決意させてくれたこの作品には、制作陣が伝えたかったであろう「今の時代だからこそ…」というメッセージをしっかり届かせる力があるなと感じました。

この世界の片隅に

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★★★☆☆ 3.6

鑑賞後「自分にはどのような生き方が出来るだろう?」と考えさせられる深い作品。現代と比べ過酷な時代で、周りに物申す事をしない優しくのんびりとした性格の北條すずがあれよあれよという間に荒波にもまれていく中で「生」を自己解釈して大人になっていく姿は気の毒なようで、しかしとても天晴れに思えた。良くも悪くも終始主人公と共に鑑賞者を振り回し続ける映画でした。